愛犬の目の下が、いつの間にか茶色く変色している。毎日拭いているのに、なかなか消えない。そんな「涙やけ」に悩む飼い主さんは少なくありません。
涙やけは見た目の問題だと思われがちですが、実は原因はひとつではありません。体質によるものもあれば、まつ毛の生え方や目の病気が隠れていることもあります。原因によって、自宅でのケアで十分なのか、動物病院での治療が必要なのかが大きく変わります。
この記事では、獣医師が監修・解説している信頼できる情報をもとに、涙やけの原因を3つに整理しました。さらに、「片目だけ」「急に増えた」といった愛犬の様子から原因の見当をつけられる早見表と、自宅でできる正しい取り方も紹介します。
- 涙やけの原因は「涙が増える」「涙の通り道が詰まる」「涙を目にとどめられない」の3つに分けられる
- 目やにが黄色い、目をしょぼしょぼさせる、白目が赤いといった症状があれば、早めに動物病院へ
- 自宅では乾いたコットンでやさしく拭き取るのが基本。こすったり、刺激の強いものを使ったりするのは逆効果
犬の涙やけとは?茶色く変色する仕組み
涙やけとは、目からあふれた涙で目の周りの毛が濡れ続け、茶色や赤茶色に変色した状態のことです。白や明るい毛色の犬ほど、変色が目立ちやすくなります。
犬の目の表面は、いつも涙で覆われています。涙には、目を潤して外からの刺激を防いだり、目に酸素や栄養を届けたりする大切な役割があります。
役目を終えた涙は、目頭にある小さな穴(涙点)から吸い込まれ、細い管を通って鼻へと流れていきます。そのため、健康な状態では涙が目の外にあふれ続けることはありません。
涙やけと「流涙症」の関係
涙が目からあふれ続ける状態を、獣医学では「流涙症(りゅうるいしょう)」と呼びます。涙やけは、この流涙症によって目の下が常に濡れた結果、毛が変色して起こるものです。
つまり、涙やけは病名ではなく「涙があふれている」というサインです。目の周りが湿った状態が続くと、細菌が増えて変色や皮膚炎につながることもあります。見た目だけの問題と考えず、なぜ涙があふれているのかを知ることが大切です。
犬の涙やけの原因は大きく3つ
涙があふれる原因は、獣医学的には大きく3つに分けられます。愛犬にどれが当てはまりそうか、確認しながら読んでみてください。
① 涙の量が増える
目に刺激や痛みがあると、目を守ろうとして涙がたくさん作られます。主な原因は次のとおりです。
- まつ毛の異常:まつ毛が目に向かって生えている、まぶたの裏から生えているなど
- 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう):まぶたが内側に巻き込まれ、まぶたの毛が目に当たる状態
- 目の傷や炎症:角膜の傷、結膜炎、ぶどう膜炎、緑内障など
- アレルギー:食べ物、花粉、ハウスダストなどで目がかゆくなり、炎症が起きる
目の傷や炎症による涙は、痛みをともなうのが特徴です。中には、進行すると失明につながる病気もあるため注意が必要です。
② 涙の通り道が詰まる
涙が作られる量は普通でも、涙を鼻へ排出する通り道のどこかに問題があると、行き場を失った涙が目からあふれます。
- 鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく):涙を鼻へ流す管が、生まれつきの形や炎症で詰まったり狭くなったりする
- 涙嚢炎(るいのうえん):涙の通り道の途中で炎症が起きる。異物や、歯の汚れからの細菌感染がきっかけになることもある
- 涙点の異常:涙の入口となる穴が生まれつき閉じている、または狭い
③ 涙を目にとどめられない
涙の量も通り道も問題がないのに、涙が目の表面にとどまらず流れ落ちてしまうケースです。
- マイボーム腺機能不全:まぶたにある、脂を出す腺(マイボーム腺)の働きが落ちた状態。涙を目にとどめる脂が足りなくなる。加齢やホルモンバランス、細菌感染などが関係する
- 顔の形:鼻が短い犬種は、目の周りの構造上、涙があふれやすい傾向がある
実際には、複数の原因が重なっていることも少なくありません。原因を正確に特定するには動物病院での検査が必要ですが、次の早見表で、ある程度の見当をつけることができます。
【早見表】症状・状況から考えられる原因
愛犬の様子に近いものを探してみてください。ただし、これはあくまで見当をつけるための目安です。自己判断で済ませず、気になる場合は動物病院で原因を確かめてもらいましょう。
| 愛犬の様子 | 考えられる原因 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 黄色くドロッとした目やにが出る | 涙の通り道での細菌感染(涙嚢炎など) | 早めに受診 |
| 目をしょぼしょぼさせる、まぶしそうに目を細める、白目が赤い | 角膜の傷、ぶどう膜炎など痛みをともなう目の病気 | すぐに受診 |
| 目のあたりをかゆがる、こすりつける | アレルギー、まつ毛やまぶたの毛による刺激 | 早めに受診 |
| 目の周りから独特のにおいがする | 濡れた毛や皮膚での細菌の増殖 | 早めに受診 |
| 片目だけ涙が多い | 片側だけの問題(異物、まつ毛の異常、通り道の詰まり、傷など) | 一度受診 |
| 子犬のころから両目に涙やけがある | 生まれつきの通り道の狭さ、まぶたの内反など | 一度受診し、経過を見る |
| 季節によって涙の量が変わる | 花粉などの環境によるアレルギー | 一度受診 |
| 鼻の短い犬種で、ずっと涙が多い | 顔の構造、まぶたの内反 | 一度受診し、処置を相談 |
| シニアになってから涙が増えた | まぶたの脂の分泌の低下(マイボーム腺機能不全) | 一度受診 |
子犬の涙やけは、成長して目の周りの筋肉や器官が発達するにつれ、2歳ごろまでに自然に落ち着くことも多いとされています。ただし、ほかの病気が隠れていないかを確認するため、一度は動物病院で診てもらうと安心です。
受診するときは、涙が多いときの写真や、時間帯・天気・その日の出来事をメモしておくと、診断の手がかりになります。
涙やけになりやすい犬種
涙やけは、特に小型犬に多く見られます。犬種によって、起こりやすい原因にも傾向があります。
| 犬種のタイプ | 主な犬種 | 涙やけが起きやすい理由 |
|---|---|---|
| 通り道が狭くなりやすい小型犬 | トイ・プードル、マルチーズ | 生まれつき涙の通り道(鼻涙管)が狭い・詰まりやすい。トイ・プードルはまぶたの内反も原因になりやすい |
| 鼻の短い犬種(短頭種) | シー・ズー、パグ | まぶたが内側に巻き込まれやすく、鼻の周りのしわの毛が目に触れやすい。顔の構造上、涙が流れにくいこともある |
| アレルギーが起きやすい犬種 | 柴犬、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア | アレルギーで目に炎症が起き、涙が増えることがある |
また、白やクリームなどの明るい毛色の犬は、同じ量の涙でも変色が目立ちやすくなります。
※WordPressでは、犬種名をトップページの犬種ページへリンクする(例:トイ・プードル → トイ・プードルのカテゴリー)
すぐに動物病院へ行くべき症状
次のような症状がひとつでも当てはまる場合は、涙やけだけの問題ではない可能性があります。様子見をせず、早めに動物病院を受診してください。
- 黄色や緑色のドロッとした目やにが出ている
- 目をしょぼしょぼさせる、まぶしそうに目を細める
- 白目が赤く充血している
- 目をしきりにこする、床や家具にこすりつける
- 目の周りから強いにおいがする
- 目の周りの皮膚が赤い、ただれている、毛が抜けている
- 急に涙の量が増えた
特に、目の痛みをともなう症状は要注意です。角膜の傷や緑内障などは、進行すると視力を失うこともあります。痛そうなしぐさが見られたら、すぐに受診しましょう。
また、こうした症状がなくても、涙が常にあふれている状態は「流涙症」というサインです。自分の目から涙が止まらなかったら病院に行くのと同じように、愛犬も一度は診てもらうのがおすすめです。
動物病院での検査と治療
動物病院では、まず目に傷や病気がないかを調べたうえで、涙があふれる原因を探していきます。
主な検査
- フルオレセイン染色検査:涙を緑色に染める目薬をさし、涙が鼻や口まできちんと流れるかを確認する。目の表面の傷の有無もわかる
- 鼻涙管洗浄:涙の入口から細い管を入れて、通り道を洗い流す。詰まりの確認と治療を兼ねることがある
原因別の主な治療
| 原因 | 主な治療 |
|---|---|
| 涙の通り道の詰まり・炎症 | 鼻涙管洗浄。細菌感染があれば抗生剤の目薬や飲み薬を併用 |
| まつ毛の異常 | 目に当たるまつ毛を抜く、毛根を取り除く処置 |
| まぶたの内反 | まぶたの形を整える手術 |
| アレルギー | 食物アレルギーなら食事の変更、花粉やハウスダストならアレルギーを抑える薬 |
| マイボーム腺機能不全 | 蒸しタオルで温める、マッサージ、抗生剤の投与 |
| 目の傷や炎症(角膜潰瘍、ぶどう膜炎など) | 目薬や飲み薬。状態によっては眼科専門病院での処置や手術 |
原因によっては、治療で涙やけが大きく改善することがあります。一方、生まれつきの構造が原因の場合は完全に治すのが難しく、自宅でのケアを続けていくことになります。
※治療費は病院や症状によって大きく異なるため、受診前に確認するのがおすすめです。
自宅でできる涙やけの取り方・消す方法
自宅でのケアの目的は、涙で濡れた状態を長く続けないことです。こまめに涙を取り除けば、新しい変色を防ぐことができます。
正しい拭き取り手順
- 乾いたコットンやガーゼを用意する
- 目の下に流れた涙を、上から軽く押さえるようにして吸い取る
- 目やにが固まっている場合は、ぬるま湯で湿らせたコットンを当ててふやかしてから取る
- 最後に乾いたコットンで水分をしっかり取り、濡れたままにしない
ポイントは、こすらずに「押さえて吸い取る」ことです。涙が気になったタイミングで、こまめに行いましょう。
すでに変色した毛は「カット」でリセット
一度茶色く変色した毛は、拭いても元の色にはなかなか戻りません。トリミングサロンに相談して、変色した部分や目やにがたまりやすい部分の毛を短くカットしてもらうのがおすすめです。
その後こまめに拭き取りを続ければ、きれいな毛が伸びてきます。目の周りの毛が短いと涙が毛に残りにくくなり、毛が目に入る刺激も減らせます。
やってはいけないNGケア
- ゴシゴシこする:目の周りの皮膚は薄く、こすると皮膚炎の原因になる
- 刺激の強いもので拭く:「目に入っても大丈夫」とうたう製品でも、犬によっては刺激になり、かえって涙が増えることがある。使う前に獣医師に相談を
- 効果がないマッサージを続ける:まぶたを温めるマッサージは、脂の分泌が原因の場合の方法。変化がなければやめて、もう一度受診する
- 自宅ケアだけで様子を見続ける:拭いても拭いても涙があふれる場合は、原因が解決していないサイン
食事を変えると涙やけは改善する?
「涙やけにはフードの見直しが効く」という情報をよく見かけます。結論から言うと、原因によっては改善が期待できるものの、食事だけで解決できるケースは限られます。
改善が期待できるケース
涙やけの原因が食物アレルギーの場合は、アレルギーの原因となる食材を避けた食事に変えることで、涙やけが改善することがあります。獣医師監修の情報でも、食物アレルギーが原因であれば食事の変更が対処法のひとつとされています。
食事だけでは難しいケース
涙の通り道の詰まり、まつ毛やまぶたの異常、顔の構造など、目そのものに原因がある場合は、フードを変えても涙があふれる状態は解決しません。
獣医眼科の専門医も、食事で涙の量が変わる可能性はあるものの、食材を変えるだけで常に涙が流れ出ている状態を改善するのは難しいという見解を示しています。食物アレルギーが流涙症の原因になることも、医学的に証明されているわけではないとしています。
おすすめの順番
- まず動物病院で、目の病気や通り道の詰まりがないかを確認する
- アレルギーの可能性があると言われたら、獣医師と相談しながら食事を見直す
- フードを変える場合は、原材料や成分を比べて選ぶ
涙やけ対策をうたうドッグフードを選ぶときの比較ポイントは、別の記事で詳しくまとめています。
涙やけを予防するポイント
痛みをともなわない涙やけは、生まれつきの体質や顔の構造が原因であることが多く、完全に防ぐのは難しいとされています。それでも、次のポイントを続ければ、変色を目立たなくしたり、早めに異変に気づいたりすることができます。
- こまめに涙を拭き取る:涙が毛に残る時間を短くすれば、変色を防げる。涙やけが目立ちやすい犬種や毛色の場合は特に習慣にしたい
- 目の周りの毛を短く保つ:定期的なトリミングで、涙が毛に残りにくい状態をキープする
- 目の健康診断を受ける:健康診断のときに、目のチェックも頼んでおく。獣医眼科の専門医は、6か月・1歳・2歳、その後は年1回程度を目安として勧めている
- アレルギーが起きやすい犬は食事に気を配る:子犬のころから食事の内容に気をつけることが、予防につながる可能性がある
よくある質問
- 犬の涙やけは自然に治りますか?
-
子犬の場合は、成長とともに目の周りの筋肉や器官が発達し、2歳ごろまでに自然に落ち着くことが多いとされています。一方、成犬の涙やけは、原因を取り除かない限り続くことがほとんどです。子犬でも、ほかの病気がないかを一度動物病院で確認しておくと安心です。
- 涙やけを放置しても大丈夫ですか?
-
おすすめしません。目の周りが濡れた状態が続くと、細菌やカビが増えて皮膚炎を起こすことがあります。また、涙やけの裏に目の病気が隠れている場合、放置すると悪化するおそれがあります。
- 片目だけ涙やけになるのはなぜですか?
-
異物が入っている、片側だけまつ毛が目に当たっている、片側の涙の通り道が詰まっているなど、片方の目だけに問題が起きている可能性があります。急に片目だけ涙が増えた場合は、目に傷がついていることもあるため、早めに受診しましょう。
- 涙やけが臭いのはなぜですか?
-
涙で濡れた毛や皮膚で、細菌が増えていることが考えられます。においが強い場合は、皮膚炎や感染が起きている可能性もあるため、動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
犬の涙やけは、涙が目からあふれ続ける「流涙症」のサインです。原因は、涙の量が増える、涙の通り道が詰まる、涙を目にとどめられないの3つに分けられ、それぞれ対処法が異なります。
- 目やにが黄色い、目を痛がる、白目が赤いといった症状があれば、早めに動物病院へ
- 自宅では、乾いたコットンで押さえるように拭き取り、濡れたままにしない
- 変色した毛はトリミングでカットしてリセットする
- 食事の見直しは、アレルギーが原因の場合に有効。まずは原因を確かめてから
「うちの子の涙やけはどのタイプだろう」と迷ったら、早見表で見当をつけたうえで、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
比較記事への誘導(公開後に設置)
参考文献
- 犬の「涙やけ」…原因や対処法、予防法を解説【獣医師監修】(犬との暮らし大百科/アニコム損害保険株式会社)
- 犬の「涙やけ」を起こす流涙症とは?原因・治療・ケアを解説【獣医師監修】(ハグわん/日本全薬工業株式会社)
関連コラム(公開後に設置)
- 犬の涙が多いのはなぜ?(コラム2)
- 涙やけケア用品の選び方(コラム3)
- 子犬の涙やけ(コラム4)
